Roots MMJ創業時からの歩み

 
毎年、生乳の需給は9月には逼迫し、MMJでも嵐のような注文があり、対応に夜を徹して農家回りをする日々であったが、今年は違った。
工場のタンクは一杯で、行き場がないほど生乳が余ったのである。
 
MMJでは9月に合わせ、万全の体制をとったつもりであったが、まったく肩透かしであった。
5月、6月、7月は非常にタイトな需給の中で、今年の夏は始まったのだが、8月に入ったら一気に状況は逆転し、余剰感をきたした。
毎年繰り返される学校給食用牛乳の変化の影響かと思っていたが、それにしても天候がいいのに(猛暑)原乳が余ってきた。
9月になれば逆転するのかと思っていた需給は、9月の第2週に入っても不足感はごく一部に過ぎず、すでに10月も終わった。
私も長年牛乳を手がけているが、これほど原乳が潤沢な年は初めての経験である。
なぜ、このような例年にない需給状況になったのだろうか。
考えてみると多くの要素が重なってこのような現象が起きてしまったようだ。

1. 脱脂粉乳処理による市場への還元

史上最高に貯まった9万3千トン(7月末)という在庫脱脂粉乳を「何としても減らせ」という国の要望を受け、 各メーカーは脱脂粉乳を使った乳製品、乳飲料を開発、発売するなど、脱粉在庫対策を打ち出した。
今夏は猛暑だったことで、低脂肪乳を求める消費者も多く、加工乳としての低脂肪乳の売れ行きは好調だったようで、 そのような消費者の需要シフトが、結果的に成分無調整牛乳の市場を圧迫した。
脱粉在庫処理問題は、今年度中に生産調整や乳価引き下げ等の追加的な対策が取られる可能性が濃厚で、今後の需給状況に大きな影響を与えることが予想される。

2. 北海道の共同経営体メガファームが本格稼動

北海道では、売るものすべて高いという(生乳、スモール、経産牛、初任牛)近年見られないほどの『酪農バブル』と言われており、 高利益を得た北海道生産者の生産意欲は、なおいっそう盛んだ。

3. 政府の夏季増産奨励金交付決定による増産

6月から11月までの夏期半年間の生乳生産量が、12月から5月までの冬期半年間の生乳生産量を上回った場合、 その増加分に対し、9.8円/kgが夏期増産奨励金として支払われる。
この措置は、平成16年を初年度として、3年間続けられると言われている。
これにより農家の生産意欲は高まり、内地でも真に受けて初任牛の増頭をした農家もある。
しかし、奨励金の交付条件を正しく理解していない農家も少なくないようである。
乳牛の生産サイクルは約1年である。
夏にたくさん搾ってきた農家が冬その乳量をコントロールできるのか、これからの問題も残しており、 生乳の需給を混乱させるだけのこのような国の政策には、首を傾げるばかりである。

4. 暑すぎた夏

今夏は、暑さも厳しかったが、涼しくなるのも早かった。
連日の厳しい暑さでお茶、水の売れ行きが盛んになって、思ったほど、飲用牛乳の消費は伸びなかった。
その後は一気に天気が悪くなり、台風は連続して上陸した。全体に消費も冷え込む。

5. 北海道からの輸送体制増強

ほくれん丸に加えて、費用も少なく速いという貨車輸送体系が本格的に取り組まれ、本州向けに7万2千トンが予定された。
8月はあまりの余剰に一部キャンセルが出る状態になった。

 
 
以上の5つもの要素が重なって、今夏、牛乳が本州に溢れる事になったと考えられる。
これにはその根底にアウトサイダー生乳の流通を公然と行うMMJの存在も影響していると思う。
MMJは、まだ始めて2年の会社であり、直接MMJが、日本全体に影響するほどのコマを動かしているわけではないとは言え、 今までの生乳流通の常識では考えられないほど大量で、つかみ所のないアウトサイダーの生乳流通なのだろう。
農水省が公の場で当社の行いを認め、毎年9月にはインサイダーの生乳が地域や乳業ごとに偏った配乳がされていることを、何とか是正するよう指示を出した。
昨年の配乳制限で倒産に追い込まれた六甲牛乳は記憶に新しいが、ほかにも前年比50%まで配乳をカットされた乳業もあった。
こうした所にMMJが生乳を届けることで、中小乳業つぶしにブレーキをかけることができたのではないか。
MMJのこうした活動によって、農水省は配乳を絞っても中小乳業をつぶすことができず、かえって優良な酪農家をアウトサイダーに取られてしまいかねない。
今回、農水省とその指定団体が北海道からの輸送体制、夏の増産体制に力を入れたことが、結果的にMMJの取扱い数量を増やし、乳業存続の役に立ったようである。