Roots MMJ創業時からの歩み

 
酪農業界では5年に1度の全共という大イベントを終え、ほっと一休みの時期といいたいところですが、 昨年来の余乳は行き場を失い、数万トンという生乳が日本国内を西に東にあふれています。
 

すでに一昨年から生産の過剰傾向はあったのですが、家畜糞尿問題による堆肥処理設備への投資や高齢化から酪農を廃業する方も多く、 全国の生産量は一時期、足踏み状態でした。
「やめそう」と思われる農家はほとんど生産の場から離れ、退場しました。
糞尿処理問題をクリアーし、経営をさらに維持拡大する農家と、高齢化や経営の行き詰まり、都市化の波など、 さまざまな理由で退場する農家に色分けされた数年でした。
 
昨年からの生乳余剰の原因の第一には消費の低迷が挙げられます。
野菜ジュースや豆乳の人気に代表される健康志向や、少子化による学乳の減少が拍車をかけてか前年比3%~4%の減です。
一方生産農家サイドでは、糞尿処理問題で新たに設備投資した分の出費を稼ぐ必要があります。
このところの酪農業での好況感、特にスモールや経産牛の高値安定は意欲的な生産者の増頭増産の後押しとなったと思われ、 生乳の需給バランスは次第に供給過剰に傾く結果となりました。
 
前回の過剰生産による生産調整が行われた13年前との最大の違いは他業種の参入でしょう。
農家保護、育成のための生産枠という認識が薄れ、日本中、誰でも自由に組合(指定団体)出荷しています。
今、最も増産に貢献しているのは各地で展開されているギガファームと呼ばれる1000頭規模の酪農会社でしょう。
そのほとんどは肉牛業や養豚業、養鶏業、建設会社など、他業種からの参入です。
こうした「酪農組合を知らない」出荷者は生産調整という言葉さえはじめて聞くという状態です。
現在の供給過剰問題について問えば、「ペナルティー?なにそれ、あまっているなら値段下げればいいじゃないの」という答えが返ってきます。
市場経済で長年生きてきた肉牛、養豚、養鶏業者としては当然の考え方なのでしょう。
 
現実に日々余っている牛乳、どうするのか。
いまさら宣伝費を何億円費やそうが気まぐれ的な消費の増減はあっても継続的な伸びは期待できません。
全体量を減産するしかないのです。
ところが、国内の半分以上の生産を担う北海道で農家の希望を募ったところ、97%の農家は減産拒否、価格の値下げを希望したそうです。
北海道では農家毎に2つの道のひとつを選んでもらうという方法が取られました。
価格を維持する代わり減産に協力するか、それとも増産が認められる代わりに、値下げに甘んじるのか、です。
 
97%の農家は更なる増産に向かうという現実。
今後数ヶ月の間、組合間、農家間では難しい調整をせまられます。
激しい攻防が予想されます。
 
こうした状況の中ではどうしても自己の経営に、また身近なところに視線が行きがちです。
組合に対して、同業者に対して、近隣に対して…結果、酪農家同士の行き場のないせめぎ合いと葛藤が生まれ、 場合によってはしばらくの間ぬぐえない禍根を残すことにもなります。
過去といってもまだ13年前です。そのときの思いはまだ忘れてはいないでしょう。
人知を尽くして過去の轍を踏まないよう、乗り越えたいものです。
なぜこうなってしまったのか?今、業界に何が起きようとしているのか?考えなければなりません。
一歩外へ出て、乳業の視点で業界を見る。
他業種の考え方で酪農業界を見る。
良い機会のように思います。
過去のアウトサイダーの失敗は、そのほとんどが生産調整が叫ばれた13年前に集中しています。
感情に任せ、目先の利得に方向性を見失い、前後の見境なくアウトサイダーの道に走るのは自殺行為といっても過言ではありません。
経営に対しての目的意識、生乳の販売とはなにを意味するのか、改めて考え直す時期ではないでしょうか。
今はここ10数年来の生乳余剰期を迎えようとしているのですから。