Roots MMJ創業時からの歩み


 
今回、年度総会での特別講演に農水OBでありながら長年にわたって農協問題を取り上げ、行政(農政)と農協のかかわりや組織としての問題点を鋭く指摘している山下一仁氏を迎える。
この5月発刊の著書「農協解体」という言葉が世間を賑わせている。
朝夕の政治、世相番組や、経済コメンテーターはこの新しいフレーズをTPPと対のものと感じているらしい。

しかし、われわれ農家にとっては決して新しい問題ではない。
私自身、家業である農業を継いだときから農協はあり、最初の営農指導を受けたのは農業改良普及所と農協職員である。
農協の餌を買い、農協の肥料を使い、初めて借金をしたのも農協である。
今から考えるとまことに高コストであった。
30年前、牛をはじめて2年目、4千万円の借り入れで始めた事業はあっという間に2倍の借金になっていた。
これはいかんと思い、餌や肥料はもっと安価に買える方法があると知り、さっさと切り替えた。
飼養方法は普及所や農協に頼らず、アメリカの農家に行って教わった。
そうしてみると、面白いほど儲かる畜産経営になった。
あの営農指導はなんだったのか?… 農協利用の高コストは何故是正されないのか?… 長年疑問に思っていた。
もうかれこれ30年前のことであった。
 
嫌なら利用しなければ良い、ことではあるが、酪農に関してそうは行かない。
生乳の出荷先農協は限定されている。
全国各地、酪農協は大きく2種類に分けられる。
JA系列と、専門農協という区分けである。
前者は金融を有する総合農協である。
後者は金融を持たない酪農家だけの専門農協といわれる組織である。
他の先進国では農業団体組織はほとんどが専門の農協組織だけである、耕種農家はもちろん、畜産農家、園芸農家まで同一組織でしかも金融までやっているという農業組合組織は他国に例がない。
JA(全農)は金融のほかに保険、共済、肥料、飼料、はては結婚式場から葬儀屋までやっている。
金融資産は国内第2位、肥料、飼料は半分以上のシェアだ。
JA組織の全体像は日本最大の「総合商社」である。しかも農地を動かせる総合商社だ、近年アパート経営や不動産の建売住宅まで売っている。
それでも「協同組合」であるから優遇税制を受けているのだから始末が悪い。
広域農協合併で農家、農業からはどんどん離れている。農家に聞けば「このままではだめだ」と言うが、どう変えたらいいのか分からなくなってしまった。というのが本音ではないか?

一度解体して農業、畜産の各専門農協を作り直す。
金融やその他の事業は分離して株式化の後、自由にやっていただく…という大胆な構想もあっていいと思う。
山下一仁氏の講演、楽しみである。
TPPの後、JA解体の後、どんな農業や畜産が存在し「日本の食」を担っているのか。
農、畜産業にとって最大の転換期を迎えることは間違いないようだ。
 
 
平成26年7月 ㈱MMJ代表取締役  茂木 修一

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