Roots MMJ創業時からの歩み

 
9月26日、北海道酪農法人会がホクレンと「意見交換会」を行った。
その席で、MMJの田口畜産がホクレンに対し前回の生産調整とプール乳価からの道外向け産地パックの製品運賃補填について、問題提起の書面(下記)を提出した。
ホクレン側は近藤部長が出席し、製品運賃補填について認めた。

ホクレン殿
ホクレン生乳委託販売の問題点と要求
2016年9月26日

 
ホクレンが指定団体(加工乳不足払い制度)として北海道の生乳のほとんどを掌握し、配乳権を持ち、販売先である乳業を選択し、その配乳量を決定しています。
国の生乳不足払い制度加工乳補填金と、それに付随する補給金補助金を全て管理しています。
一元集荷多元販売という定義の元に、その権利、権限は補給金、酪農政策までおよびます。
利権と物量、財の集中は業界に歪みと矛盾を生むのではないでしょうか。
指定団体制度が施行されて50年、当初7%であった全国シェアは55%になります。
ホクレンは国からも組織改革を迫られる今、生乳生産者であり、ホクレンに委託販売している(又は委託販売していた)私たち経営者の質問に率直に答えていただきたい。

1、 生乳生産調整について、
平成17年、18年、減産型生乳生産調整を実施した。
この件についてホクレン板東常務は本年3月10日、内閣の規制改革会議で「失敗であった」と発言されている。
末端農協毎に生産枠を算定し生産農家に枠外数量を自ら廃棄させた。
経済的な負担は全て当該酪農家に負担させました。
当時、ホクレン系列の農協以外に出荷の手段が無かった農家は不公平かつ一方的な減産命令を受け、その精神的なストレスは計り知れない。
「失敗であった」とする失敗とはなんであったのか?
その責任は、誰が何処でどう取ったのか説明願いたい。
また、報告書はあるのか。ないとすれば早急に製作していただきたい。

2、 生産調整時の個別廃棄乳の補償
共販体制の「一元」はホクレンである。
生産枠を末端農協、個別農家に当てはめるのではなく、ホクレン全体で枠外廃棄乳の処理、費用負担を行い、減産計画を実施するべきであったと考える(注1)。
当時の個別農家で廃棄した数量を調査して、補償すべきである。

3、 製品運送補填は契約に違反する。
北海道内乳業の産直パックに対応した内地向け製品運送補填費の拠出は契約違反であると思われます。
農家と所属農協及びホクレンとの契約は「生乳委託販売契約書」であります。
製品になったものは契約の範囲ではありません。
明らかな契約違反であるため、即刻中止する様に求めます。

4、 3の運送補填は契約違反である為、過去10年遡り全メーカーの補填金額を過去10年間の生乳生産者に返還するよう求めます。

5、 3、は加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、第二章、第七条、六に違反する。
よって、第十条一に該当し、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の指定団体の指定を解除される疑いがある(注2)。
管轄官庁である北海道庁に経緯を説明する必要があると思います。

(注1)平成25年、田口畜産(田口廣之代表)は乳質等に不安を感じ自主規制で出荷を制限した。
これを知った北海道十勝の明治乳業工場長は「そのような農家の生乳はうちの工場に持ち込むな」と受乳を拒否した。
品質には全く問題なかったが、札内農協は日高乳業に転送し、しばらくこれを続けた。
この転送費を同農協は田口畜産に請求し、田口畜産は支払っている。
その結果生じた費用負担を請求され支払った。
同様に生産調整で個別農家の生乳を全量集乳しなかった農協またはホクレンは個別に廃棄された生乳の代金と廃棄費用を支払う義務がある。

(注2)北海道の産直パックに運送補填が補助される様になると東北はじめ関東でも末端小売価格の値下がりが顕著になった。
東北ではその対策に生乳販が拡売奨励金を取引全量に対し、最大1割まで増額している。
当然、生産者のプール乳価は大幅に控除金額が増し下がった。法令違反である。

以上、早急に対応願いたい。

農家が組合と締結している契約は「生乳委託販売」である。
製品の運送費は乳業が100%負うべきであってプール乳価からの拠出は論外である。
しかもその金額は運送費のほとんど全額になる。
年間、関東以西分のリッターパック運賃補填だけで56億円と言う。
東北地方への運送補填、殺菌乳(缶コーヒーの原料)など他の乳製品への補填金も究明する必要がある。
総額どのくらいになるのか計り知れない。
昭和60年から補填を始めた、と近藤酪農部長は証言している。
乳業には運送補填の実態を他言無用と命じ、農家に知れることを隠した。
田口畜産に始まるアウトサイダー(自主販売)が現れるまで、数字が世に出ることは無かった。
JA組織は外圧でしか変われないのか。
法に外れても修正することもできないのか。
これから責任の追及と賠償が求められる。
いよいよ農家に向かって胸襟を正さなければならない。

この「ホクレンとの意見交換会」で見えるもの

意見交換会の中に現在の制度の問題がほとんど凝縮されている。

1, 生産調整問題
2, 製品運送補填
3, バターの慢性的な不足
4, 各種補給金のあり方
5, 全農、全酪と言う指定団体の計画経済の中の見えないバイパス

ホクレンは30年前から、契約違反である製品の運送補填をプール乳価から拠出している。
この時既に指定団体の計画経済の破綻は始まっていたのである。
ホクレンに限らず、東北生乳販、九州生乳販も同様な補填金(拠出方法は若干違う)を拠出している。
ホクレン担当部長の答弁に「補填を付けなければ市場で勝負にならない」「末端市場価格で競争できる価格に」と言う言葉が頻繁に聞かれる。
これは市場経済に合わせる、同調させると言うことであり、計画経済の敗北を意味している。
この事実を農家に隠しながら契約違反である製品への運送補填を30年も続けていたことになる。
こうした指定団体がメーカーに対して価格交渉などまともに出来るわけがない。

とは言え、現行の補給金支払いを直接支払いにしては、指定団体制度が施行される前の状況、大手乳業の生乳の独占と地域格差、相場の異常な高騰と余剰が起こりかねない。
最も被害を受けるのは飲用乳の7割を支える中小乳業や、遠隔地酪農であろう。
とてもMMJ一社でこれらを一つひとつ繋げていたのでは間に合わない。

現行制度を脱しなければ、酪農家は元気にならず、消費者に乳製品(バターなど)の不足、欠品などの迷惑がかかる。
酪農家、誰もが生乳を上場でき、どの乳業も自由に生乳購買ができる市場の創設が急務と考える。
皆が共有する市場の創設が前述の5項目の問題解決の手段になる。
 
平成28年10月5日  ㈱MMJ代表取締役 茂木修一