• 酪農と乳業をむすぶ生乳売買プラットホーム

 
4月19日に北海道幕別町で開催した緊急説明会→(緊急説明会資料)を、別海と札幌でも開催した(5月21日、22日)。
今回は準備時間もあったので講演者として北海道大学の清水池先生も参加いただけた。
毎回団体側(ホクレン)責任者の招聘を申し込んできたが、今回も断られた。
昨年の秋の酪農学園大学での北海道農業経済学界大会でも対談を断られ、今回の説明会も団体側の方と議論を戦わせる事はできなかった。

ホクレンの売り上げの3割は酪農部門であるという。
それが「無くなるかどうか」であるから小さい問題ではないと思う。
規制改革会議の指定団体廃止提言を「無かった事にしてくれ」と組合長の議決をもって陳情に行ったのが4月末、それから現在(6月4日)まで、 今回の加工乳補填金の直接支払いについて、組合員レベルでのホクレンを代表とする団体側の会議(説明会等)は持たれていない 。
本来各単協に持ち帰って、今回俎上に上がっている加工乳不足払い制度の歴史的経緯、50年の間、何度も大きな問題が発生してきたことを検証しなければならない。

過去4回の減産型計画生産の犠牲になった生産者に報告書さえ出されていない。
5月19日の規制改革会議の答申では、補填金は継続し、共販制度も維持される。
ただ独占的一元集荷体制に問題がある、と提言している。
今後、農家や農協単位で補填金の直接支払いを受けながら、自由に販売先を選べると言う。
乳業もこれは同じになる。
この事がそれぞれの経営にどう生かせるのか?
じっくりと、かつ多角的に考える必要があると思う。
何がどう変化し、自分の経営には…組合の運営には…消費者やバターのユーザーにはどのような影響があるのか、どうしたらこの変化をプラスに転化し、経営や組織に取り込めるのか?

考える時が来た。
当初盛り込まれた指定団体「廃止」の文言は削除され、答申の「看板」は文言を優しくした。
しかし中身は3月31日の提言とほとんど変わっていない。
やるのだ。

<<緊急説明会(別海会場)での各講演者の要旨>>
 

ちえのわ事業協同組合代表 島崎氏

別海町の地域社会の疲弊、酪農家の減少を食い止めるため、ちえのわ事業協を設立したと話し、競争のない生乳流通に問題があると指摘。
団体以外に出荷するという選択肢を酪農家に示すとともに、自らの生乳が製品化し「別海のおいしい牛乳」として消費者に届けられる喜びを語った。
飲用向けでの販売を通して、自分たちの生乳の風味の良さに、改めて気付くことができたという。
海外輸出についても、台湾への売り込み等積極的に取り組んでいることを明かし、自主販売だからこそできる事であることを強調した。
 

田口畜産社長 田口氏(MMJ北海道支部長)

自主販売に踏み切った理由として、平成18年生産調整で156t廃棄した事が大きなきっかけであったとし、指定団体の需給調整機能に疑問を投げかけた。
平成19年3月には再度生産枠を理由に廃棄を迫られ、これらの生産調整に関し、生産者に対するきちんとした説明をホクレンに求めた。
島崎氏と同様、「十勝牛乳」として製品化できたことは生産者の励みになるとした上で、 六次化等で酪農家が小売りまで手掛けることのリスクを指摘、乳業との分業をしっかりすることが重要であると話した。
 

東海牛乳社長 井尾氏

指定団体の飲用乳の配乳は中小乳業に回ってこない、と過去の生乳販と自主流通の比較グラフをもとに説明された。
過去15年もの間、生乳販からの入荷は伸びず、MMJからの配乳だけが着実に増えている。
その間、工場の生産はMMJの増加分がそのまま反映され、3倍になっている。
昨年、名古屋地区の2番手、3番手の乳業が廃業したが、その際も大手乳業に全て配乳枠を持って行かれた。
東海生乳販はまったく中小乳業の意見や要望を聞く姿勢がないと批判。
乳価についても、東海生乳販からは一枚の文章で「大手乳業と交渉の結果下記のように決まりました」と一方的な通知文が毎年来るだけだ。
と、まるで大手乳業と一体化したかのような生乳販の姿勢に「現行の制度に問題がある」と疑問視する。
量的な面、価格的な面から努力した者に配乳は拡大されるべきで、既存の大手乳業だけが価格、配乳の両方を独占している現行体制は良くない、と批判された。
 

北海道大学 清水池先生

5月19日答申の表題は柔らかくなっているが、内容は3月31日の提言とほとんど変わっていないと解釈。
EU諸国の生乳共販制度を例にとり、共販率の高い国ほど生乳の農家仕切り価格は安定的に高いが、高くなりすぎると他国から製品が入ってくるのでそのバランスは難しい。
共販率(日本のような一つだけの共販ではなく多数多様な共販の合計)は60%以上で効果は現れ、共販率が高い国ほど自由販売の農家は共販農家よりも高い乳価を獲得している、と説明。
(清水池先生講演資料)
 

富士乳業社長 千葉氏

岩手県岩手町で大型酪農を経営、今期からMMJ取引先の富士乳業に社長として就任。
岩手県生乳販、東北生乳販、全体を仕切るJAを内部から改革しようと試みた経緯を話された。
閉鎖的すぎる組織は内からの改革は無理だと判断。
農家のため、地域社会に貢献できるような、酪農と乳業を育てたいと抱負を語った。
 

MMJ社長 茂木

規制改革会議の答申を受け、組合や酪農家には指定団体制度について話し合う機会を持ってほしい。
過去の生産調整について、平成5年には生産枠の売買があり、補助金の交付も行われたが、平成18年は全て生産者個人の負担となった。
数千万の負債を個人に押し付け、農協、団体は検証も説明もしていない。
バター、脱脂粉乳の加工コストは国内23円に対し、アメリカ、カリフォルニア州では6.5円である。→(加工コスト資料)
光熱費等、要因はあるがもう一度加工コストを見直すべきではないか。
MMJでは北海道に加工工場を建設する構想があるが、厳密にコスト計算した上で採算は合うと判断した。 →(茂木講演資料)
 

質疑応答

(※文中敬称略)

【質問】
MMJとして別海に乳業工場を建設する計画は本当にあるのか。(別海町酪農家)
【回答】
茂木:昨年から計画している。
ちえのわ、乳業とMMJの3社での共同計画。
品目はバター、脱脂粉乳で日量20t程度処理を予定している。

島崎:ユーザーからは高品質の乳製品を求められている。
「別海のおいしい牛乳」を販売して、成分等の数値はもとより生乳の“味”の重要性がわかった。
我々のおいしい生乳を生かした乳製品を作り、それを求める所へ届けたいと思っている。
 
【質問】
なぜあえて加工工場建設なのか。
加工向けが発生するとMMJの農家の手取りは下がってしまうのではないか。(別海町酪農家)
【回答】
茂木:MMJの取扱量増加に伴い、年末年始には大量の余乳が発生する。
今はそれを価格を下げることでさばいており、昨年の余乳対策費は4700万にのぼった。
今後取扱量に比例してさらにこの金額が増えることを考えると、その費用を加工に向ける方が牛乳の価値向上の為にも良いと判断した。
加工工場は余乳の受け皿として必要なだけでなく、付加価値の高い乳製品を作ればプラスアルファがある。
最初から乳価は飲用向けで試算しており、余乳対策費を含め、年間通して採算はとれる見込み。
 
【質問】
中小メーカーは団体に対し、大手よりいくらか高く買うことで量を確保するような交渉はできないのか。(別海町酪農家)
【回答】
井尾:団体は年間計画以外でのイレギュラーな対応はしてくれない。
そのような交渉にも応じないだろう。
MMJからの購入価格は平均すると団体と同じ。スーパーへの営業の際はまず物量の確保が第一で、価格交渉はその後となる。

茂木:計画経済では、配乳はすべて実績で決まる。
当然大手に有利となる。
いくら出そうが新規参入はできず、価格によって配乳が変わることはない。
富士乳業はMMJと取引する前、東北生乳販から拡売対策控除(キックバック)を月間約600万受け取っており、その事実は農家には伏せられていた。→(富士乳業資料)
これは酪農家の望む委託販売なのだろうか。
悪しき計画経済の一例ととらえている。農家の皆さんにはこの機会に良く考えてほしい。
 
【質問】
MMJ(全国生乳自主販売協議会)は今回の規制改革会議の提言を受けた陳情書を提出したとの事だが、どこに提出したのか。(別海町酪農家)→(陳情書資料)
【回答】
井上:各国会議員の他、農水省牛乳乳製品課に提出をした。
 
【質問】
多くの問題があるにもかかわらず、指定団体制度改革がなかなか進まないのはなぜか。(別海町酪農家)
【回答】
田口:平成18年の生産調整に関する説明を求めるため酪農法人会の有志数名でホクレンを訪れたことがあるが、板東常務からは所属農協組合長を通せと言われ取り合ってもらえなかった。
酪農法人会の活動ではホクレンに直接出向いたり、乳業メーカーに行ったりしているが、それらの活動についても常に監視や、発言の抑制をされていると感じる。
酪農家の声を届け、改革を進めるために組織強化していく必要がある。

島崎:全道の酪農家同士の横のつながりを作り、情報共有していく酪農研究会を発足する。
地域農協をまたぐ全道の組織は今まで無かった。政策提言なども積極的に行っていく。
 
【質問】
MMJの乳価について、すべて飲用向けで売れればよいが、チーズやバター向けになった分の乳価はどうなるのか。(別海町役場畜産課職員)
【回答】
茂木:バター、脱脂粉乳の加工費23円と言われるが、これは単にコストの積み上げによるものだ。
コストを引いた残りが乳価で、競争が無いからコストは下がらず、30年前の設備で工場の稼働率が低くても工場は倒産していない。
アメリカは競争があるから6.5円でできている。
MMJがすべての原乳を取り扱うということはあり得ない。
共販であることは団体と同じだが、委託販売でなく買取である点が違う。
農家は、様々な共販組織の中から、価格を含め検討し自らの経営に合うものを選択すればよい、というのがこの改革案の内容だ。

島崎:私は、全部がMMJやちえのわに出荷するようになれば良いとか、思っているわけではない。
現行のホクレンや、大手乳業の工場も大事で、がんばってほしい。
ただ今の流れを変えたい、基幹産業としての酪農を取り戻すことが活動の目的だ。
 
【質問】
改革により補給金がMMJ等にも支給されることになると、その支給業務を行うための団体が新たに必要になるのではないか。(別海町酪農家)
【回答】
清水池:支給業務については国の範疇だが、もし補給金を加工向けが発生した個々の生産者だけに直接支給するということになると、共販ではなくなる。
共販下ではプール乳価となるはずだからだ。
従って、生産者団体を作りそこへ支給するという形にならざるを得ないのではないか。
 
【質問】
規制改革で共販率が下がることにより、EUのように価格交渉力が落ち乳価が低下するのではないか。(別海町酪農家)
【回答】
清水池:個人的見解として、今回の改革がなされても、MMJがすべての生乳を買えるわけではなく、また、現行の指定団体制度には一定の経済的合理性があるので、 需要との関係で共販率は大きく低下することはないと考えている。
しかし農協の単位でのホクレン離脱があると、大きな問題になると思う。

茂木:改革がなされるとMMJの他にも新たな共販組織が現れるかもしれない。
その中で価格交渉力のあるところが酪農家に選ばれ、残っていくのだと思う。
集送乳合理化等コスト削減努力、販売力が問われる。
清水池先生の指摘のように農協単位での独立もあるかもしれない。
現在は酪農家は地域農協への所属に縛られているが、自由に移籍できるような新しい農協の形態が重要になるだろう。
 

説明会で思った事

清水池教授の話は中立的な目線で指定団体と自主流通の比較、また、共販制度の有無とそのバランス、市場への功罪などEU諸国の例をとっての説明は解りやすかった。
解説の中で共販率が高くなるとその中の自主販売農家の乳価は比較優位が生まれると言われたが、日本の場合どうであろうか?
MMJも共販の一つであるから指定団体や他の共販団体を除いた単独の自主販売農家の乳価は高いか?というと、そうでもない。
共販率は97%以上になるが残り1%から2%の自立した農家の立ち位置が弱い。原因がどこかにある。
共販率がここまで進むと業界としての活性を失うのかも知れない。
今後、加工乳補填金の直接支払いが行われた場合、既存の団体やMMJを含む多くの共販団体が生まれ、農家と乳業をつなぐ世界になると思う。
その時、共販率はどの程度が適正なのか、見極められる。
生乳流通新時代が始まる。
的確に情報を集め、自己の経営を適用させたものが残る時代が来る。

札幌の説明会にホクレン代表が来なかった。
関係者さえ来なかった。
当初、札幌会場はホクレンビルの会議室を借りようとして申し込んだが断られた。
しかたなくホテルの会議室になった。
ホクレンビルと言う「本丸」に出向いて今回の制度改定についての議論しようとしたが断られた。
この加工乳指定団体制度は酪農業界のために必要なのだ、として、ホクレンは補填金の運営を農家のために施行している、という大義があれば、 会場へ出向くホクレン職員、役員、または代表理事がいるはずである。
ところが、まるで殻にこもった様に表に出て来ない。
全く無反応であった。
農家の前で制度について説明する事もなければ、その必要性を訴えるでもない。
決定は国会だからと、議員先生に頼むだけであった。初めから農家は無視されている。
自分たちのホクレンには必要な制度だからそのままにしてくれと言わんばかりだ。
「農家のために」という大義を無くし、守るだけになってしまった巨大組織。
今回の説明会で感じたのはホクレンの終わりの始まりである。
 
 
平成28年6月4日  ㈱MMJ代表取締役 茂木修一