• 酪農と乳業をむすぶ生乳売買プラットホーム

 
2007年、2008年、と今年と4年間に3回中国の酪農、畜産の各先進地域を見学してきたが、 各地域一様に感じたことはその活気とすさまじいばかりの建設ラッシュである。
日本の建築基準から比較すると非常に簡単で節約した構造の建築物が多いが、その量、大きさ、件数には圧倒される。


 

上海郊外 30階建てマンションを5棟同時に建設進行中

 
こうした光景が蘇州や北京、大連、威海、青島、どの都市でも見られた。
こんなにも多くの高層住居を中国全土に建設して誰が使うというのか?と、心配してしまう。
日本の不動産バブル、アメリカの住宅バブル、そして今度は中国ではないだろうか?
「こんなことはどう考えてもおかしいだろう」と思えることは殆ど大きな「修正」を迫られてきた。
いずれ供給過剰となる、経済のリセッションである。
中国のそれは5年後か10年後か判らないが、いずれ来ることになるだろう。

酪農も例外ではない、前年対比120%の伸び率で増産している。
今回は威海、大連、北京の主にスーパーや中間業者、市場視察をしてきた。
食品は全体に値上がり傾向にあった。牛乳も1年前と比べ、約2割くらい値上がりしている。
 

ほとんどはLL牛乳なので通常の通路、棚で売られている。 1Lパックが55円から65円くらいで売られている。

 
1パック60円前後と安い気がするが、一般の中国の労働者クラスには高級食材なのだろう。
高級そうな棚の配列と、箱にリボンをつけて贈り物にも使えるようになっている。
まだまだ輸送のコールドチェーン、家庭の冷蔵庫の普及が少ない現状ではLL牛乳が主流となっている。
それでも一部の消費者はおいしいフレッシュな牛乳を買い求めている。
しかし全体的な数量割合はLLが90%、フレッシュ(高温、中温、低温)が10%前後、 さらにオーガニックとなると単価は上がるが本数は出ない。0.1%とも言われている。
今回、驚いたことがもうひとつある。
オーストラリア、ニュージーからパック牛乳が大連まで入ってきていた。
たぶんほとんど中国の全域の大都市に売られているだろう。

1Lパックが500円近くしていたから価格的に中国産とは比較にならない高級品といえる。
飲用試験をしてみたが、特に味に問題は無い、昔のようにLL独特のこげ臭はなく、脂肪 が高めなため、濃厚な甘みを感じた。

高級品が並ぶ棚の多くのスペースをとる海外製品。
この中で日本のアサヒビールが青島で牧場を建設して売り出している「ASAHI」ブランドはこの1ランク下になる。
 

高級海外ブランド牛乳 10倍の値段が付くものもある。

 
一昨年報道で大きな騒ぎとなったメラミンによる幼児死亡事故の影響は今も尾を引いている。
中国産食品はいまだ信用を回復していないようだ。
経済的に余裕のある中産階級以上では幼児には今も外国産の粉ミルクを与えているという。
現地入りしてからスーパー家家悦で食品スーパーの経営コンサルタントを営んでいる吉田氏と話をする機会を得た。
日本からの売り込みは多数訪れるが、中国市場はものにあふれ「中国に無いものはない」という。
世界中の食品は言うに及ばず、衣服、ブランド品、新幹線やコンピューター、ロケットまで全て作っている。
まさに世界の「生産工場」となった。
その中国に物を売ろうとしたら、「品質がいいんです」「安心、安全です」だけでは売れないという。
強力なコネ(莫大なお金を使った)と他に負けない低価格が求められるという。

牛肉市場

牛肉市場は魅力的だ。
日本に口蹄疫が発生し、日本からの海外輸出が禁止されている影響であろう、 通称神戸牛といわれている(まったく認識するもの、個体番号とかがない)ブロックは15000円/kもする。
一般的な中国、赤牛の良い肉でも300円~400円/kであることからすると、まったく法外な値段といっていい。
それでも生鮮物の小売店(屋台のような出店)で1日20k平均売れるというのだから市場ニーズはあるのだろう。
1キロ当たり1万円の粗利があるとすればトランクにつめて運ぶ人も現れてもしかたない。
同様な肉は中国でも若干生産されている。
雪花牛といわれ各都市に販売拠点もありブランド化されている。
これらは6500円/k前後だ、中国国内ものは基本的に信用度が低く価格も安いという印象を受けた。
 

中国産和牛 雪花牛 500円前後/100g

 

通称、神戸牛ブロック 15000円/k 前後

 
中国で商売を始める、または展開するという上で欠かせないのが会食である。
その会食の席上では当然高級食材が求められる。
日本の80年代90年代に相当するのだろう。
接待交際費は多く使ったほうが将来の商売拡大、利益の誘導につながると考えられているようだ。
 
通称、神戸牛ブロック 15000円/k 前後今回のキーパーソンでありメインゲストでもあるジャン(家)社長(黒のセーター) と肩を組む松井(中央)。

 
アラスカからチルドで運ばれたサーモンは美味であった、ジャン社長の仕事である。

研修を終えて

日本で商売を成功させたといっても、その手法が中国では通用しない、 もし共通し、通じるところがあったとしても2割くらいだろう、と言った吉田氏の話が印象的だった。
そのくらい大陸と島国、自由経済と計画経済では違いが出る。そこへさらに国民性の違いも明らかに大きい。
中国国民がメラミンの一件で日本の食品に関心を寄せていることはあるかもしれないが、 ほんのごく一部の話で、その消費の規模、国の大きさからして生鮮物の販路を築き、展開していくのは非常に困難と思われた。
中国国内でも食の安全を考えている消費者は一部にいる、がまだ1割にも満たない。
それでも14億ともいわれる人口、その1割であれば数的には多いいのかもしれない。
ただ、牛乳に関してはすでに他国がオーガニック製品を届け、中国国内でもオーガニック牛乳は生産されている。
この市場に生産者価格がすでに90円(7元)以上している日本の普通牛乳を売り込むのは困難をきわめる。
日本の牛乳は高い、末端商品のパック価格であっては中国の3倍している。
いずれ来る牛乳の過剰生産を見据えての「販路」として中国は難しいという印象を受けた。

今はまだ関税障壁があるが、数年先、TPP、そしてFTAが実施されれば国内の牛乳は行き場を失うだろう。
そのとき日本の酪農は壊滅的な打撃をこうむる。もちろん酪農だけではないが・・・。

日本国内の口蹄疫の終息宣言からまだ3ヶ月しか経っていない。中国では日本の牛肉を欲している。
現在は香港経由で流入しているらしいが、正規の方法とはいえないであろう。
今後禁輸がとければ大幅な買い注文が入る、和牛市場はタイトになり、枝肉価格は高値を回復するだろう。
当然子牛価格はさらに値上がりする。

一昨年、中国は日本の貿易相手国として米国を抜き、日本の輸出先の最大手となった。
今後も日本はこの隣の大国、中国に大きく影響されるだろう。農業、畜産も例外なく。
影響されることを逃れるすべは、たぶんない。
逃れられないならばこの産業に振りかかる危機的状況を自らリードし、チャンスに変えられないか?模索していきたい。
 
 
2010年12月23日 茂木修一