• 酪農と乳業をむすぶ生乳売買プラットホーム

知っているよ、と言われそうだが、まずはバターはどう作られるのかを簡潔に説明させて頂きたい。

バターは牛乳の中の脂肪分(生クリーム)から作られる。

生クリームは牛乳から10%程度取れ、バターになると5%程度になる。

バター、生クリーム以外は殆どが脱脂粉乳など粉物製品となって業務用の食品原料(パン生地、ヨーグルト、乳飲料)などになる。

牛乳から作られるバター、脱脂粉乳の比率は変わらないが、消費者の嗜好は日々移り変わる。今回のように急遽、政府の緊急対応で全国のレストランなど外食が止まり、イタリアンやインド料理など大量に業務用バターを使っていたところも止まった。

空港や駅の土産物の焼き菓子、パンも全く売れなくなった。

2020年5月 羽田空港第二ターミナルビル

 

一方、家庭ではどうか?、いつも外で食べていた食事のメニューを「家でも作ってみようか」と、スーパーの売り上げは前年比110%、120%。都市部にあっては150%というスーパーも出現した。

生クリームやバターの消費は通常、10月頃から増え、12月がピークになる。

農畜産業振興機構 HPより抜粋

 

ところが今回の新型コロナの「巣篭もり需要」では例年では売れない、とされる春に12月並みの需要(注1)があった。

バターがウイルス感染リスクを軽減する食材、というTV番組(注2)の影響もあった。

業務用バターの需要減による余剰、家庭用(200g)バターの不足が起こった。

バターは国に管理されている乳製品の筆頭である。バターの加工工場は国(農林水産省)の管理下(注3)にある。

年度当初(19年春)時点で予測できないことは対応できない → バター不足がおこった。

 

もっとも、緊急事態宣言が発動された今年3月8日でも対応しようと誰かが考えれば対応できたと思う、が国は動かなかった。

業界関係者の中には先んじて「家庭用バターをどこかで手当て出来ないか?」と3月に対応に走ろうとしていたが難しかったようだ。

加工乳製品の「配乳計画遵守」を中央官僚から言い渡されている。問題が全社会的な規模にならなければ配乳計画が動くことはない。

 

毎年、酪農家の契約が指定事業者や乳業と取り決められるのは2月だ。2月の時点で翌年3月末までの出荷数量が決められる。加工原料乳の計画も同時に進められる。

全ては前年実績対比の計画だ。

消費動向や緊急的変動に対応する契約内容になっていない。

農水作成 加工原料乳生産者補給金制度のポイント

P1には「安定的に牛乳・乳製品を消 費者に供給するためには、年間を通じた契約に基づいて取引することが重要です。」とあるが「消費の変動に対応する」とはどこにも書いていない。

農畜産物は季節ごとに生産が偏り、集中する。米は秋しか収穫されない。ほとんどの野菜もそうだ。

牛乳は秋から春にかけて生産が増え、夏はヒートダメージで生産は減少する。

消費者の需要は季節によって移り変わる。飲用の牛乳は夏に多く売れ、秋からは売れなくなる。それも年によって様々に移り変わる。

安定的な供給には安定的な生産が必要だが、生産と消費を結ぶ流通まで計画通り、計画遵守だけでは消費者の流動的な変化には対応できない。

年間500億円余の加工乳関係の予算を投じ、今年は学校給食関係でさらに100億円出費されるだろう。

それでも学乳の200ccのパックを作らず、1リッターパックに切り替え増産する事。

業務用バターの生産を控えて家庭用200gのバターを供給する事、さえ出来なかった。

一方で「牛乳を配給して欲しい」とも言われていないのに、タダで配って補助金予算を消化した人達もいた。

「何をやっているんだろうこの業界は」という声も聞かれた。

関係者は反省するべきと思うが、多分、反省どころか「よくやった」と思っている方々がほとんどだろう。

 

MMJ では数年来、このバターの生産と供給が業界変革のキモであろうと考え工場建設を模索し計画も立てた。しかし大きな業界の壁に阻まれている。

難しい、本当に難しい。

工場を建設するからには、他社のどの工場にも負けないようなコストを実現したい。技術レベルも優れたものにしたい、と思うが肝心の機械設備メーカーの協力が全く得られていない。見積もりさえ出ない(注4)。

お土産屋さんに置く程度の手作業で作るバターであれば直ぐにもできるが、1日100個や200個作ったところで意味がない。

千葉のベーカリーで試作品の北海道バターを試験販売した事がある。一店舗で200個完売できた。

中には一度買って、しばらくしてからまた買いに来て5〜6個追加で持って行く方もいた。

呼び止めて理由を聞いてみると「美味しかった」という。

この日、売ったのはチルドバターだった。国内に出回るバターは殆どが冷凍保存されたものだ。料理に使っては判別できないが、そのままパンやケーキに使って食べるとはっきりと違いが分かる。

マイルドでサッパリしていて美味しい。

バター工場建設、壁は厳しく高く聳え立つがいつか乗り越える。

 

株式会社MMJ 代表取締役社長 茂木修一

 

 

(注1) 家庭でパンやクッキー、イタリアン料理などバターを多用する料理が作られたとみられている。

(注2) 林修の「今でしょ講座」https://www.tv-asahi.co.jp/imadesho/osarai/0032/

バターと蜂蜜が血管の強化、粘液機能の強化に効果的だという。

WHOでは低脂肪牛乳が効果的だ、とコロナ対策の食生活について案内している。

https://sndj-web.jp/news/000638.php

(注3) 加工工場は計画数量を年度前に生乳指定団体のホクレンなどに提出し計画に従った配乳を受ける。バターなどの乳製品は年度計画に従って生産される。

(注4) 日本の乳業器械メーカーはここ50年間、全国の生乳配乳権95%以上を仕切り、加工乳製品では99%以上のシェアを独占していた指定団体系統(JA)に属する乳業の仕事で事業を行ってきた。「誰のおかげで飯が食えたんだ?」と言われれば従うしかない、という。